この大切な事業コンセプトに込められた意図を念頭に置きながら「統一感の中にも主張のある建物にしたかったんですよ」と語る関氏は、計画の発想が沸くと早々に名古屋まで足を延ばし、MAストーンが採用されている物件を視察。まずはじかに材質や風合いを見た上で、コンセプトの具現化に適する素材であるかどうかを判断したという。本件で全面的に使い切れる色として関氏が選んだダークグレーは、まさに現代的でありながら重厚感ある風合い。「これなら使い切れる」と確信を持てたのだそうだ。
実際の施工では、外壁を ALC とし、その上にMAストーンが用いられている。硬質の ALC に対し、柔軟性のあるMAストーン。それぞれ異なる材質である双方の相性は、というと「下地の精度さえしっかりしていれば、施工完成の姿を実現できますよ。動きのあるジョイント部分は、目地で吸収されるので大丈夫。相性は良好と言えるでしょう」との明快な答えを頂くことができた。エントランス部には角の肉厚を細工するなど、MAストーンの特徴を活かした素晴らしい応用もなされている。
意匠性ばかりでなく「施工から空調、各設備まで、それぞれのディティールや納まりを大切にすることで、全体に緊張感が生まれるんです」と言う関氏。この空間バランスを実現させるには、施主、設計、施工間の一連のコミュニケーションを充実させることも重要なポイントとなる。「だから、四角い箱をきちんときれいにつくることこそ難しいんですよ」との言葉に、建築に対する関氏の姿勢が凝縮されているといえよう。そして、MAストーンに関しては「カラーバリエーションをさらに充実させて欲しい」との要望もあえてあり、今後ますます求められる素材としての本品に現場からの真摯な声を促してくれた。 |